エッセイ「空気まで清らかに!」

石井直子

昭和天皇御製
さしのぼる朝日の光へだてなく
世を照らさむぞわがねがひなる

(昭和35年)

「ひと晩寝ただけなのに、今日はどうしてきのうと違うのかな?」

お正月の晴れ着を着せてもらい、陽のあたる縁側で、青空を見上げながらそう思ったのは、小さいころの元日でした。町じゅうがしーんとしていて、空気まで清らかに感じられたのが、子供心にも不思議に思えました。

町から新年の静けさが消えて久しいあるとき、私は初めて伊勢神宮を訪れました。静まりかえった杉木立の参道を歩いていると、なぜか、とても懐かしい心地がしました。そこには、子供のころのお正月に感じた、あのしーんとした清らかさが満ちていたのです。

あの清々しさのみなもとが、そしてこの国の繁栄の源泉が、そこで朝に夕に捧げられている祈りにあることに気づいたとき、目が覚める思いがしました。

新しい一年、キリストのみ光があまねく日本を照らし、清い息吹が、たちこめる雲を吹き払ってくださいますようにと、私も祈ります。