エッセイ「青年にのぞむ ―成人の日によせて―」

新しい時代は、青年によって作られるものである。新しい創作、発明、発見というものは、必ず青年が発明するものである。面白いことであるが、この創造的意欲が新しい時代を作るものである。

あの有名な新大陸発見にしても、青年だから、ああいう大きな発見が出来たのであって、青年の他に新大陸の発見は絶対に出来ない。

イエス・キリストが神の示しを受けたのも、若いから受けられたので、イエス・キリストが年寄りであれば、ああいう時代は創造し得なかったであろう。

私は日本歴史を見ても、西洋歴史を見ても、新しい時代はすべて、若き創造心によって作られると思っている。あの有名な、すべての革新というものは、全部の全部が青年によって持ち来たられたものである。

老人は退却し、若い人を前進させる工夫を考えなければならんと思う。私はこれは学問でも、芸術でも、すべての場合において皆同じであると思う。

私は日本の新しい時代は青年によって、こののちも創造せられることを思っている。

吉田松陰が飛び出して、海外に渡ろうとしたことも、また、我が国における明治御維新のすべての計画が、若き人によって計画されたことは、こののちも永遠の真理であると思っている。

発明、発見、電気にしても、あるいは代数、幾何、すべての学問は、若き人が考案するほか道はない。これは東洋においても、西洋においても同様であると思っている。我々はこの青年を通して、新しい時代を作ってもらいたいと思っている。

(賀川豊彦 昭和34年10月)