若人の証し「赤ちゃんは奇跡の連続で生まれてくる!」

たくましい助産師を目指して!

奥田聖子

私は今、助産師として働いています。生まれてきた赤ちゃんを最初に抱き上げるのが、助産師です。

赤ちゃんは、生まれてきて最初に「おぎゃー!」と産声を上げることによって、肺呼吸が始まります。そのため、産声が上がるまでのあの少しの時間は毎回、すごい緊張感があります。その分、産声を聞いた時の喜びは格別ですね。

ただ、助産師としては喜んでばかりはいられません。生まれて最初の数分で、赤ちゃんの手足の指の数から、目、鼻、耳、口、お尻まで、全部確認して記録を残していきます。

私は2年目を終えた新人助産師です。何百、何千の子供を取り上げてこられた先輩方とは、大きな経験の差があります。でも、たとえ助産師を目指す学生であっても妊婦さんに付き添う以上は、不安を与えてはいけません。「大丈夫ですよ!」とどっしり構えながら、妊婦さんが「よし、産もう!」と出産に向かえるような心のケアをすることも、大事な仕事の一つです。

以前は余裕のない中で、「安心を与えるんだ」と、意識しながらやっていました。でも、最近ようやく、「自然に安心を与えるような一歩を踏み出せたかな」と思えるようになってきました。

人が生まれるという神秘

私が助産師という仕事に出合ったのは看護学生の時でした。授業の中で妊娠から出産までのことを学んで、ほんとうに驚いたのです。「人がこの世に誕生するためには、こんなにたくさんの奇跡が連続して起こっているんだ!」と、命の神秘を初めて知りました。

妊娠すること自体、あらゆるタイミングと条件がそろわないと起こりません。いくら希望しても、妊娠できない方は少なくありません。また妊娠後も、流産や早産になることは、一般に思われているより多いのです。分娩(ぶんべん)では、仮死状態で生まれてくることもあります。

いつ何が起こってもおかしくない状態を、神様に守られているとしか思えない時を過ごして、一つの命が誕生する。その事実を知って、とても感動しました。

そんな神秘な出産の瞬間に立ち会える助産師という職業にあこがれて、今があります。

命のかかった現場で

実際は、人の生死がかかった、緊張感の高い職業です。陣痛はいつ来るかわからないため、交替で夜勤をしながら、常に24時間体制で備えています。また、母子の状態によっては緊急帝王切開となることもあります。私の勤務している病院では、2000グラム前後の赤ちゃんであればNICU(新生児特定集中治療室)で対応することができます。

助産師になって1年目は比較的、順調な出産が続きました。「何が起こっても不思議ではない」と頭では思いながらも、いつの間にか健康な赤ちゃんが生まれてくることが、私の中で当たり前になってしまっていました。

それが、2年目になって、死産の現場に立ち会うことが何度かありました。赤ちゃん用の小さな棺(ひつぎ)を用意して、ご両親はひと晩を、赤ちゃんと一室で過ごされます。私はご遺体のための保冷剤を交換に行ったのですが、
「この子が地上に生まれてきたことには意味があるのですよね。神様、どうかご両親に心の安らぎと希望を与えてください」と心の中で祈りながらお部屋に伺いました。

ご両親に何と声をかけたらいいのかわかりません。考えた言葉ではだめだと思い、できるだけ自然体で接しました。

そのお母さんが、「思っていたより、この子に会えたうれしさのほうが大きかった」とおっしゃった言葉は、心に残りました。

保冷剤はLDR(分娩室)にあるのですが、取り替えた保冷剤を戻しにその部屋に入った時に、渦巻くようなエネルギーを感じました。

ここで産声を上げる赤ちゃんもいれば、上げられない子もいる。元気に退院できることは、当たり前ではない。生と死が交錯する、すごい場所なのだ。ここに使命を与えられて、私は仕事をさせていただいているのだと、改めて思いました。

祖父の祈っていた姿

私の育った家庭は祖父母の代からキリストの信仰をもっています。

3年前に亡くなった祖父は、おなかの底から祈る人でした。大きな声で祈るということではなくて、「祖父の前には神様がいるんだな。一対一でお話ししているんだな」と幼かった私が感じるような、真実な祈りをする人でした。

在りし日の祖父(右端)と聖子さん(左端)

私が神様とお出会いしたのは高校生の時です。幕屋のある集会で、伝道者の方が私の頭に手を按(お)いて祈ってくださいました。すると言葉にならない祈りがおなかから、私の深いところからわいてきました。「私の魂が産声を上げた」と感じた瞬間でした。何が起こったのかわかりませんでしたが、集会の後もうれしくてうれしくて、涙があふれて止まりませんでした。帰りのバスに乗っていると、夕焼けが黄金色にキラキラ輝いていて、その美しさを忘れることはできません。

それまでは漠然としていたのですが、そこからは「神様は生きている!」という確信が私の中にわくようになりました。

先日、陣痛が微弱な方に陣痛促進剤を使用しました。私は隣の部屋で、「神様、どうか無事に陣痛が強くなって、出血も少ないお産になるよう守ってください」と祈りました。つぶやくような小さな声の祈りでしたが、すると、「大丈夫だ!」という確信がグッとわいてきました。そして、願ったとおりのお産となりました。

祖父が祈っていた祈りを、私も仕事の中で体験しつつあるのかな、と感じています。

もっと知識と経験を積みながら、たくましい助産師になりたいと願っています。生まれてきた時に、祈りのこもった手で赤ちゃんを抱き上げられるよう、今日も祈りをもって働きます!


奥田聖子
24歳 北海道名寄(なよろ)市在住。最近は韓ドラにハマっています。インスタグラムで、知らない人の赤ちゃんや子供の成長を見るのも楽しいです。


本記事は、月刊誌『生命の光』830号 “Light of Life” に掲載されています。